同業の経営者の皆さん、「親族からの借入金」の処理、どうされていますか? 私の会社には現在、私の父と母から借りている総額1200万円の借金があります。
これは単なる運転資金の借入ではなく、両親が個人で所有していた「営業車」と「倉庫」を会社が適正価格で買い取り、その代金を分割で支払っているものです。(※税理士確認済みの資産買取です)
先日、その両親から呼び出され、こう言われました。 「老人ホームの資金(500万ほど)を貯めたいから、今のうちに役員報酬を上げてくれ」
親の老後を思う気持ちは、痛いほど分かります。 しかし、私は決算書を預かる経営者として、即座に「イエス」とは言えませんでした。
なぜなら、ここで安易に報酬を上げるのは、資金繰りにおいて**「明らかな悪手」**になりかねないからです。
「役員報酬アップ」のデメリットを計算する
親の言う通りに役員報酬を上げるとどうなるか。冷静にシミュレーションしてみましょう。
例えば、手元に月20万円を多く残したいとします。 これを「役員報酬」として渡すと、以下のようなコストが発生します。
- 会社側: 社会保険料の負担が激増します。
- 個人側(両親): 所得税・住民税・社会保険料が引かれます。
会社と個人、ダブルで資金が流出することになります。 「親の手取りを増やす」という目的のために、税金と社会保険料で大きく目減りさせてしまうのは、あまりに効率が悪すぎます。
そこで私が選んだ方法は、**「借金(未払金)の返済」**として20万円を渡すことです。
「返済」なら税金も社保もかからない
「給料」ではなく「借金の返済」としてお金を渡すと、話は変わります。
- 受け取る親: 借金の元本返済なので**「非課税」**です。所得税も住民税もかからず、まるまる手取りになります。
- 会社側: 無駄な社会保険料の負担が発生しません。
結論は明白です。 同じ20万円を動かすなら、「給料」でもらうより「返済」でもらう方が、家計全体の手残りは圧倒的に多くなります。 これが、資産買取債務を活用する最大のメリットです。
老後のまとまった資金は「退職金」で
では、親が心配している「老人ホーム資金」はどうするか? これには、将来使える**「切り札」**があります。
それが、**「役員退職金」**です。
今、無理に報酬を上げて、高い税金を払いながらコツコツ貯金するよりも、いざ施設に入るタイミングで「退職金」として会社から支給する方が合理的です。 退職金なら、税制上の控除枠が非常に大きく、税金はほぼかかりません。 さらに、会社にとっては全額損金(経費)になり、大きな節税効果も見込めます。
- 今は「資産買取債務」を淡々と返し、現金を無税で親に移転する。
- 将来は「退職金」でまとまった資金を渡す。
これが、会社にキャッシュを残しつつ、親の老後も守るための最適な資金移動の形です。
感情と勘定(そろばん)のバランス
「会社にお金があるなら出してくれ」という親の感情論。 「会社を存続させるためにキャッシュを残す」という経営者の勘定論。
この板挟みは、親族経営ならではの悩みです。 しかし、情に流されて会社の財務を悪化させては本末転倒です。
「ケチっているわけじゃない。税金で目減りさせずに、一番多く親父たちの手元に残る方法を選んでいるんだ」
そう説明し、数字で納得してもらうのも社長の仕事です。 減価償却費も計算に入れつつ、無理のない返済計画(月30~40万程度)で、着実に完済を目指したいと思います。
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