【第36話】「もう部活には戻らない」と告げた息子。その言葉の裏にある心理と、親父が仕掛けた「最後の賭け」。

3学期が始まって2週間が経ちました。 始業式の日の「暴力」、翌日の「幻覚」。 あの泥沼の開幕戦から、息子は奇跡的な粘りを見せています。

なんと、2週間、毎日学校に行っています。 宿題はしていませんが、そんなことは些細な問題です。 朝起きて、制服を着て、電車に乗って学校へ行く。 これだけで100点満点、いや120点です。

そんな中、少し精神的に余裕が出てきたのか、息子がボソッと私にこう言いました。 「俺、もう部活には戻らないから」

この言葉を聞いた時、皆さんの家ならどう返しますか? 「もったいない」「あんなに頑張ってたのに」「逃げるな」と言いたくなるのが親心です。

しかし、私はこの言葉を「復帰へのサイン(観測気球)」だと捉えました。

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「戻らない」は「戻りたい」の裏返しかもしれない

人間、本当にどうでもいいことは口にしません。 わざわざ親に「戻らない宣言」をする心理。それは、自分自身への「予防線」であり、親への「テスト」です。

  • 予防線: 体力も落ちているし、今さら戻ってチームメイトに合わせる顔がない。「戻りたいけど、ダメだった時に傷つきたくない」から、先に「戻らない」と言っておく。
  • テスト: 「野球をやらない俺には価値がないのか?」と親の反応を試している。

ここで親が「戻れよ」と焦ると、彼は「ほら見ろ、やっぱり野球が大事なんだ」とへそを曲げます。

だから私の返答はシンプルです。 「そうか。まあ、お前が決めたならそれでいいよ」

拍子抜けするくらいあっさりと。 これで彼は「反対するためのエネルギー」を失い、初めて自分の本心(本当はどうしたいか)と向き合うことになります。

伸びた髪の毛は「リトマス試験紙」だ

復帰するかどうかの最大のヒントは、ボサボサに伸びてきた**「髪の毛」**にあります。 そろそろ床屋に行く時期です。

ここでも「短くしてこい(野球部仕様の坊主)」とは言いません。 「だいぶ伸びたな。床屋代、置いとくぞ」 とお金だけ渡して、あとは彼に任せます。

  • 坊主にしてきたら: 復帰確定。何も言わずに赤飯です。
  • お洒落カットにしてきたら: 今回は見送り。でも、それでいい。

親に言われて刈るのではなく、彼が自分で決めて、自分でバリカンを握る日が来るのを待つ。 それが「自立」への第一歩です。

親ができる唯一の「裏工作」

とはいえ、完全に放置するのも不安です。 何かきっかけを作れないか。 親が直接「戻れ」と言うのはNGですが、「環境を整える」ことはできます。

私は、野球部の監督に一本だけ連絡を入れることにしました。 ただし、「誘ってやってください」とは頼みません。それは押し付けになります。

伝えるのは「事実」だけです。

「先生、お世話になっています。おかげさまで学校には行けています。 本人は強がって『部活には戻らない』と言っていますが、家では体を動かしたりしています。 親からは何も言わず見守るつもりですが、現状報告だけさせてください」

これだけで十分です。 良い指導者なら、これを読めば「なるほど、あいつ待ってるんだな」と察してくれます。

もし学校で監督やチームメイトとすれ違った時、 「おう、学校来てるらしいな」 と、自然に声をかけてもらえる環境だけ作っておく。

打席に立つかどうか決めるのは息子です。 親父にできるのは、ベンチを温めて、いつでも戻れるように道具を磨いておくことだけ。

焦らず、息子の「采配」を信じて待とうと思います。

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