3学期が始まって2週間が経った。始業式の日の「暴力」、翌日の「幻覚」。あの泥沼の開幕戦から、息子は奇跡的な粘りを見せている。
なんと、2週間、毎日学校に行っている。宿題はしていないが、そんなことは些細な問題だ。朝起きて、制服を着て、電車に乗って学校へ行く。これだけで100点満点、いや120点だ。
そんな中、少し精神的に余裕が出てきたのか、息子がボソッと俺にこう言った。「俺、もう部活には戻らないから」
「戻らない」は「戻りたい」の裏返しかもしれない
この言葉を聞いた時、皆さんの家ならどう返すだろうか。「もったいない」「あんなに頑張ってたのに」「逃げるな」と言いたくなるのが親心だ。
しかし、俺はこの言葉を「復帰へのサイン(観測気球)」だと捉えた。
人間、本当にどうでもいいことは口にしない。わざわざ親に「戻らない宣言」をする心理。それは、自分自身への「予防線」であり、親への「テスト」だ。
予防線:体力も落ちているし、今さら戻ってチームメイトに合わせる顔がない。「戻りたいけど、ダメだった時に傷つきたくない」から、先に「戻らない」と言っておく。
テスト:「野球をやらない俺には価値がないのか?」と親の反応を試している。
ここで親が「戻れよ」と焦ると、彼は「ほら見ろ、やっぱり野球が大事なんだ」とへそを曲げる。だから俺の返答はシンプルにした。「そうか。まあ、お前が決めたならそれでいいよ」
拍子抜けするくらいあっさりと。これで彼は「反対するためのエネルギー」を失い、初めて自分の本心と向き合うことになる。
伸びた髪の毛は「リトマス試験紙」だ
復帰するかどうかの最大のヒントは、ボサボサに伸びてきた髪の毛にある。そろそろ床屋に行く時期だ。
ここでも「短くしてこい」とは言わない。「だいぶ伸びたな。床屋代、置いとくぞ」とお金だけ渡して、あとは彼に任せる。
坊主にしてきたら:復帰確定。何も言わずに赤飯だ。
お洒落カットにしてきたら:今回は見送り。でも、それでいい。
親に言われて刈るのではなく、彼が自分で決めて、自分でバリカンを握る日が来るのを待つ。それが「自立」への第一歩だ。
親ができる唯一の「裏工作」
とはいえ、完全に放置するのも不安だ。俺は、野球部の監督に一本だけ連絡を入れることにした。ただし、「誘ってやってください」とは頼まない。それは押し付けになる。
伝えるのは「事実」だけだ。「おかげさまで学校には行けています。本人は強がって『部活には戻らない』と言っていますが、家では体を動かしたりしています。親からは何も言わず見守るつもりですが、現状報告だけさせてください」
これだけで十分だ。良い指導者なら、これを読めば「なるほど、あいつ待ってるんだな」と察してくれる。
打席に立つかどうか決めるのは息子だ。親父にできるのは、ベンチを温めて、いつでも戻れるように道具を磨いておくことだけ。焦らず、息子の「采配」を信じて待とうと思う。
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