「友達の前では笑顔だったのに」その夜、息子は泣き崩れ、私に膝蹴りをくらわせた。

学校に行かなくなってから、ちょうど1週間が経った頃だった。「このまま部屋に引きこもらせていてはいけない」「早いうちに何とか手を打たないと手遅れになる」

そんな焦りばかりが募っていた俺は、野球部の監督から提案された「友達を家に招く」という荒療治に賭けてみることにした。

目次

「完璧な演技」に騙された俺

睡眠や食事は問題なく取れていた息子。「友達と会えば、何かが変わるかもしれない」と、俺は安易に考えていた。

実際、野球部の仲間が家に来ると、息子は驚くほど「いつも通り」だった。冗談を言い合い、笑顔を見せ、まるで不登校になる前と何も変わらないように見えた。

俺はホッと胸を撫で下ろした。「なんだ、大丈夫じゃないか。これでまた学校に戻れるだろう」

しかし、それは俺の完全な勘違いだった。彼は、友達の前で必死に「普通の自分」を演じていただけだったのだ。

その夜、限界が訪れた

友達が帰り、夜になり、静けさが戻ったリビングで、それは突然始まった。

息子がいきなり、床に崩れ落ちるようにして泣き出したのだ。ただの涙じゃない。嗚咽のような、魂の叫びのような声だった。

「大丈夫か!?」。俺が慌てて抱き起こそうとした、その瞬間だった。ドスッ!という鈍い衝撃が、俺の腹部を襲った。息子からの、全力の膝蹴りだった。

止まらない暴力の嵐

そこからは、もう何が何だか分からなかった。俺がよろめくと、今度は階段から突き落とされそうになった。甲子園でどんな体格の相手とぶつかっても倒れなかった俺が、息子の力に恐怖を感じた瞬間だった。

止めに入った妻の胸ぐらを掴み、壁に押し当てる息子。そして、行き場のない怒りをぶつけるように、壁を殴りつけた。友達の前で見せていたあの笑顔は、この莫大なストレスを隠すための仮面だったのだ。

焦りが生んだ悲劇

「早いうちに対策を」という俺の焦りが、彼をここまで追い詰めてしまった。外で無理をして、その反動で、一番安全であるはずの家で爆発させてしまった。

壁に残った穴を見るたびに、俺の胸も同じように抉られる思いがする。「学校に戻す」なんていう安易な解決策は、もう捨てなければいけない。俺たちがまずやるべきは、この穴だらけになった息子の心と、安全な家を取り戻すことなのだと、痛いほど思い知らされた夜だった。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次