次男が「俺の教えたバッティングフォーム」を捨てた日。そして蘇る、酒に溺れた父の記憶。

キッチンのテーブルには、今日も半分残された「セノビル・ジュニアプロテイン」が置かれています。 体格の小さい次男のためにと、私が飲ませているものです。

「飲めよ」と言えば飲むけれど、彼はいつも少しだけ残す。 それが、私の過干渉に対するささやかな抵抗のように見えて、胸がチクリとします。

目次

俺の指導を「捨てた」次男

先日、次男の練習を見ていて驚きました。 バッティングフォームが変わっていたのです。

これまでは、元甲子園球児である私が教えた通りの形、私が「こうしろ」と言った守備の形を忠実に守っていました。 不器用な長男とは違い、次男は器用です。私の理論を体現できるセンスがありました。

でも、結果が出なかった。 体が小さいこともあり、パワー負けしていました。

それが今、彼は「自分で考えた形」でバットを構えています。 「こっちの方が、フィーリングが合うんだ」 そう言いたげな背中でした。

「寂しいな……。でも、嬉しいよ」

親の言いなりだった人形が、一人の野球選手として歩き始めた。 結果が出ない私の指導に見切りをつけ、自分で自分に合う形を探し始めたのです。 その成長が頼もしくもあり、もう私の手元には戻らないのだという寂しさも感じました。

175cmの暴力と、父の記憶

我が家の柱には、何年にもわたって兄弟の身長を刻んだ傷があります。 いつの間にか、長男の傷は私の目線を超え、175cmになりました。 私よりも大きくなりました。

不登校になり、荒れた長男。 情けない話ですが、筋肉がついた息子の暴力を、私は「怖い」と感じます。

その恐怖を感じるたび、嫌な記憶がフラッシュバックします。

布団の中で震えていた夜

私の父は、酒癖の悪い人でした。 酔っ払っては暴れ、家の中を破壊する。 子育てをされた記憶も、家族旅行の思い出もありません。

覚えているのは、父が暴れる音を聞きながら、姉と一緒に布団を頭から被り、耳を塞いで震えていた夜のことだけです。

「怖い、早く終わってくれ」 あの時の感情と、今、長男が暴れている時に感じる感情は、酷く似ています。

自分が親になり、まさかあの夜と同じ恐怖を、今度は息子から与えられることになるとは思いませんでした。

勝手に押された保護者印

そんな中、次男もまた、静かに私から離れようとしています。

彼はテストの結果が良いようですが、私に成績表を見せません。 順位は上がっているはずなのに、勝手に保護者欄に私のハンコを押し、学校に返却してしまうのです。

「順位、どうだったんだ?」 私が聞いても、彼は手を振って「もういいから」と会話を終わらせます。

以前の私なら、「見せなさい!褒めてやるから!」と無理やり奪っていたでしょう。 でも今は、それができません。

「無関心」が正解なのか?

  • 長男には干渉しすぎて、潰してしまった。
  • 私の父は無関心すぎて、私に恐怖しか植え付けなかった。

では、次男にはどう接すればいいのでしょうか? 成績が良くても褒めず、自分流に変えたフォームにも口を出さず、父のように「無関心」でいることが、彼にとっての正解なのでしょうか。

運動神経が良く、器用だった私。 でも「父親業」だけは、どこまでも不器用なままです。

半分残ったプロテインを流しに捨てながら、私は正解のない問いを繰り返しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次