【第36話】息子からの「無視」と、妻への「感謝」。親父は無力でいい、それが家族のチームプレー

「おはよう」

返事はない。

「おかえり」

目も合わない。

息子は今、俺のことを徹底的に無視している。

あの幻覚騒ぎの夜、俺に泣きついた自分が恥ずかしいのか。

それとも、父親という存在自体が今の彼には重たいのか。

正直、寂しい。

自分の家なのに、俺だけが透明人間になったような気分だ。

「俺はここまで我慢しているのに」と、声を荒らげたくなる瞬間もある。

でも、俺は何も言わない。

「高性能なラジオ」になって、一方的に挨拶を投げ続けるだけだ。

目次

「俺にはできないこと」をする妻

俺には口を利かない息子だが、妻とは話す。

妻が聞けば、「一人で寝れる」と本音を言うし、学校の進路調査のことも話すようだ。

今の我が家は、完全に分業制だ。

息子を受け止め、ガス抜きをする「妻」。

その輪に入らず、空気のように見守る「俺」。

ふと、「俺は父親として何もできていないんじゃないか」と無力感に襲われることがあった。

でも、今日気づいた。

俺が手を出して「おい、どうなんだ」と介入したら、息子の逃げ場がなくなる。

俺が「無視される役(壁)」に徹しているからこそ、息子は安心して妻に甘えられるのだ。

最強のバッテリー

野球で言えば、妻がマウンドでピンチを凌いでいるピッチャー。

俺はベンチで、じっと戦況を見つめ、いつでも妻を支えられるように準備する監督だ。

もし俺一人だったら、とっくに家族は崩壊していただろう。

妻がクッションになってくれているおかげで、息子は今日、電車に乗って学校へ行けた。

「俺では何もできません」

そう妻に言ったら、妻は笑っていた。

それでいい。

母ちゃんがエースだ。

俺は、母ちゃんが倒れないように、全力で後ろから支えるよ。

いつもありがとう。

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