「大いびき」に安堵し、壁の物音に怯える。元甲子園球児の情けない午後。

昨夜、友達が帰った後、息子は逃げるように部屋に閉じこもりました。 そして今日の午前中も、一度も階下に降りてきませんでした。

「また、昨日のように暴れるんじゃないか……」 私の体は、無意識に身構えていました。

しかし、午後15時過ぎ。 息子の部屋から聞こえてきたのは、怒号ではなく、「大いびき」でした。

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「普通の高校生」を演じる代償

ドア越しに聞こえるガーガーという音を聞いて、私はハッとしました。 「ああ、こいつは昨日、命を削って笑っていたんだな」と。

久しぶりの友達との再会。 彼は笑顔で冗談を言い、完璧に振る舞いました。 でもそれは、心の中に嵐を隠したままの、決死の演技だったのでしょう。

その反動で体力を使い果たし、泥のように眠っている。 全然眠れていなかったのか、それとも緊張の糸が切れたのか。

理由はなんでもいい。

親父キャプテン

「生きて、寝てくれているだけでいい」

大いびきを聞きながら、私は少しだけ肩の荷が下りるのを感じました。

それでも体は正直に反応する

しかし、情けない話ですが、私の体はまだ「非常事態」を解除できません。

いびきが止まり、ドスンと何かが落ちる音がしたり、息子が独り言で唸るような声が聞こえたりすると、私の心臓はドクン!と跳ね上がります。

「また壁を蹴るんじゃないか」 「降りてきて暴力を振るうんじゃないか」

甲子園の打席で、どんな強豪校のピッチャー相手でもビビらなかった私が、息子の部屋から聞こえる物音一つにビクビクしているのです。

社長の顔、親父の顔

会社に行けば、30人の従業員を束ねる役員として、堂々と指示を出しています。 でも家に帰れば、息子の顔色を伺い、物音に怯えるただの中年男です。

「情けないな」と苦笑いが出ます。 でも、これが今の我が家のリアルです。

今は、嵐が過ぎるのを待つ

いびきがまた聞こえ始めました。 彼も戦っている。夢の中で、あるいは現実との狭間で。

私が今できることは、彼を無理に起こすことでも、学校の話をすることでもありません。 私のこの「ビクビクする心」を認め、彼が起き上がってくるまで、じっと待つことだけです。

「生きていれば、それでいい」 そう自分に言い聞かせながら、私はまた、息子の部屋の方角に耳を澄ませています。

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