副業の確定申告、「雑所得」のままでいいのか。300万円という見えない分岐点
会社の経営者として毎年確定申告をしている自分だが、実は個人的に細々と続けている原稿執筆の副業収入については、長年「雑所得」として何となく処理していた。
だがある年、税理士から「これだけ継続してやっているなら、事業所得として申告した方が有利かもしれませんよ」と言われて初めて、自分がこれまで受け取れたはずの控除を、ただ知らないという理由で受け取っていなかったことに気づいた。
「雑所得」と「事業所得」、何が違うのか
副業の収入は、その性質によって「雑所得」と「事業所得」のどちらかに区分される。同じ金額を稼いでいても、どちらに区分されるかで税務上の扱いはまったく変わってくる。
国税庁は令和4年、この区分についての通達を一部改正し、判断基準を明確化した。ポイントは大きく二つある。
出典: 国税庁「所得税基本通達の制定についての一部改正について」(令和4年)
一つ目は「営利性・継続性」だ。単発的・偶発的な収入は雑所得に分類されやすく、営利を目的として継続的に行われている活動は事業所得として認められやすい。
二つ目は「帳簿書類の保存」だ。収入金額が300万円以下であっても、帳簿書類を作成・保存していれば、原則として事業所得に区分される。逆に言えば、帳簿をつけていなければ、たとえ継続的な副業であっても雑所得と判断されるリスクが残る。
なぜこの区分が重要なのか
事業所得として認められる最大のメリットは、青色申告を選べるようになることだ。青色申告では、最大65万円の特別控除を受けられるほか、赤字が出た年は翌年以降の黒字と相殺できる「損失の繰越控除」なども使える。
雑所得のままだと、こうした控除は基本的に使えない。同じ売上、同じ経費でも、区分ひとつで手元に残る金額が変わってくるということだ。
「オープン戦」と「公式戦登録」の違い

野球で例えるなら、これは「オープン戦感覚で続けている副業」と「公式戦のロースターに登録された選手」の違いに近いと自分は思っている。
オープン戦だけ出ている選手には、シーズンを通した個人成績も、タイトル争いへの権利もない。だが、きちんと一軍登録され、公式戦に継続的に出場する選手になれば、打率も本塁打数も正式な記録として積み上がり、タイトルを争う資格が生まれる。
副業も同じで、「なんとなく単発でやっている」という自己認識のままでは、税務上もずっと「オープン戦」の扱いにとどまる。帳簿をつけ、継続的な事業として取り組む姿勢を形にして初めて、公式戦としての特典、つまり青色申告控除のような制度を受け取る資格が生まれる。
赤字を「繰り越せる」ことの意味
事業所得のメリットとしてもう一つ見逃せないのが、赤字が出た年の「損失の繰越控除」だ。副業を始めたばかりの年は、機材やソフトへの初期投資がかさみ、収支がマイナスになることも珍しくない。
事業所得であれば、この赤字を翌年以降最大3年間、繰り越して黒字と相殺できる。雑所得にはこの制度がないため、赤字が出てもその年限りで消えてしまい、翌年以降の税負担を軽くする材料には使えない。
自分が副業を始めた初年度も、正直ほとんど利益は出ていなかった。もしあのとき事業所得として届け出て、きちんと帳簿をつけていれば、その後の黒字化した年の税負担を、もう少し軽くできていたかもしれないと今になって思う。
帳簿づけは、想像より身構えなくていい
「帳簿」と聞くと、経理経験のない人ほど身構えてしまうと思う。だが今は、クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、簡単な仕訳をつけていくだけで、青色申告に必要な帳簿はある程度整えられる時代だ。
すべてを一から手作業で記帳していた時代とは違う。副業の規模がまだ小さいうちから、収入と経費だけでも記録する習慣をつけておけば、後になって「今年から急に事業所得に切り替える」という判断もしやすくなる。
自分が副業を持つ人に伝えたいこと
自分自身がそうだったように、「副業だから、そこまで本格的にやる気はない」という感覚のまま、何年も雑所得で処理し続けている人は少なくないと思う。だがその感覚と、実際の活動の継続性・規模とがズレている場合、本来受けられるはずの控除を取りこぼしている可能性がある。
一方で、注意も必要だ。事業所得として申告するということは、それだけ帳簿づけや記帳の手間が増えるということでもある。継続する見込みが薄い、金額も小さいという場合には、無理に事業所得を選ばず、雑所得のシンプルな処理のままにしておく方が合理的なこともある。
大事なのは、自分の副業が今どちらのステージにいるのかを、毎年なんとなくではなく、意識的に見直すことだ。会社の決算でも、去年と同じやり方を思考停止で繰り返すことが一番危ない。副業の申告区分も、同じように定期的な棚卸しが要る。
「バレたくないから雑所得のまま」という判断の危うさ
副業を会社に知られたくないという理由で、あえて申告の中身を簡素にしておきたいという気持ちも理解はできる。ただしこれは、事業所得か雑所得かという区分とは、本来別の話だ。会社に副業が伝わるかどうかは、主に住民税の徴収方法(普通徴収か特別徴収か)の設定によって左右される部分が大きく、申告区分そのものを変えたところで、会社バレのリスクが直接減るわけではない。
「なんとなく目立ちたくないから雑所得のままにしている」という理由だけで、本来使えるはずの控除を手放しているとしたら、それは少しもったいない判断かもしれない。
判断に迷ったら、専門家という審判に確認する
正直、自分もこの区分をすべて独力で判断できる自信はない。営利性・継続性・帳簿の有無、どれも最終的には個別の事情を踏まえた総合判断になる部分が大きく、税理士や税務署への確認が欠かせない。
自分が学んだのは、「知らなかった」という理由だけで、本来受け取れる控除を取りこぼすのはもったいないということだ。副業を始めて数年が経ち、収入も安定してきたという人は、一度、自分の申告区分が今の実態に合っているか、確認してみる価値があると思う。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断については税理士・税務署にご確認ください。

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