夕方になると視界がぼやける。それは「老眼」じゃなく、40代の目が悲鳴を上げているサインだ

在宅ワークでの眼精疲労

夕方になると視界がぼやける。それは「老眼」じゃなく、40代の目が悲鳴を上げているサインだ

パソコンの画面から目を離して遠くを見た瞬間、一瞬ピントが合わない。会議資料の細かい文字が、夕方になるとやけに霞んで見える。自分がこの感覚に気づいたのは、経営者として在宅で資料作成をする時間が増えた頃だった。「ついに老眼か」と一瞬焦ったが、調べていくうちに、原因はそれだけではないと分かってきた。

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目の悩みを抱える人は、7割を超えている

40歳以上のワーキングウーマン1,022人を対象にした調査では、仕事上で目に関する悩みを持つ人が7割を超えるという結果が出ている。老眼だけでなく、疲れ目やかすみ目、乾きなど複数の症状が同時に重なっているケースが多い。

出典:株式会社アップビート調査(日本経済新聞 NIKKEI COMPASS掲載)

自分の周りの経営者仲間にも、40代に入ってから「夕方の資料チェックがつらい」とこぼす人が急に増えた。年齢のせいだと片付けられがちだが、実際には働き方そのものが目に負荷をかけている面が大きい。

ブルーライトが引き起こす症状は、思ったより幅広い

日本眼科医会が眼科医を対象に行った調査では、ブルーライトが及ぼす影響として「眼精疲労」を挙げた医師が53.6%と最多で、次いで「視力の低下」48.6%、「ドライアイ」43.4%、「目のかすみ」31.3%と続く。単なる「疲れ目」の一言では片付けられない、複数の症状が絡み合った状態だということが分かる。

出典:日本眼科医会・第21回日本眼科記者懇談会「働き世代の皆さん、在宅ワークで目が疲れていませんか?」

さらに、在宅ワークが広がった時期には、ドライアイ患者が増えたと感じる眼科医が38.0%、著しい視力低下がみられる患者が増えたと感じる眼科医が38.4%にのぼったという報告もある。働き方の変化が、目という臓器に直接影響を与えているのは、もはや個人の感覚の問題ではなく、データが裏付ける事実だ。

野球で言えば、「目」は最も酷使される道具だ

現役時代、バッティングで一番大事なのはボールを最後まで見る「視覚」だと教わった。動体視力が落ちれば、どんなに筋力があってもボールに差し込まれる。目は道具というより、選手生命そのものを左右する器官だと自分は思っている。

経営者になった今も、事業の判断材料は結局「見て、読んで、理解する」ことから始まる。目が疲弊した状態で契約書や決算書を読めば、見落としのリスクは確実に上がる。バットの素振りをどれだけ磨いても、目が霞んでいてはボールを捉えられない。それと同じ構造の問題が、デスクワークの現場でも起きている。

眼精疲労を引き起こす、3つの外的要因

日本眼科医会の解説によれば、眼精疲労を引き起こす外因性の要因として、パソコン作業による長時間の近距離視、画面の明暗差、室内の照明環境などが挙げられている。在宅ワークでは、オフィスのように照明環境が整備されていない自宅の一室で、長時間モニターに向き合うケースが多く、この負荷がより蓄積しやすい。

出典:公益社団法人日本眼科医会「パソコンと目」

①近距離視の連続。画面と目の距離が近いまま何時間も作業を続けると、ピント調整を行う毛様体筋が緊張し続け、疲労が蓄積する。

②画面と周囲の明暗差。暗い部屋で明るい画面だけを見続けると、瞳孔の開閉が激しくなり、目にかかる負担が増す。

③まばたきの減少によるドライアイ。画面に集中するとまばたきの回数が自然と減り、目の表面の涙の膜が乾きやすくなる。これが「ドライアイによる眼精疲労」という、在宅ワーク特有の悪循環を生む。

食事から目を守るという発想

自分は経営者として、体調管理も経営資源の一部だと考えている。目についても同じで、外側からのケアだけでなく、食事から目を守るという発想を持つようにしている。

黄斑部に存在する「ルテイン」という成分は、抗酸化作用に加えて、ブルーライトの光を吸収するフィルターの役割を果たしている。米国で行われた大規模研究AREDS2(Age-Related Eye Disease Study 2)では、ルテインとゼアキサンチンの補給が加齢黄斑変性の進行抑制に効果があると報告されている。目の健康維持に必要な摂取量は1日6〜10mg程度とされ、ほうれん草やケールなどの緑黄色野菜に多く含まれる。

出典:新日本製薬「目の保護に必要なルテインの効果とは」

現役時代、体を作るのは食事だと口を酸っぱくして言われた。40代になった今、それは目にも当てはまる。夕食の付け合わせを一品、緑黄色野菜に置き換えるだけでも、地味だが積み重ねの効く投資になる。

緑黄色野菜を使った夕食

ブルーライトカット眼鏡は「魔法の道具」ではない

在宅ワークの目対策としてよく名前が挙がるのが、ブルーライトカット眼鏡だ。自分も一時期使っていたが、正直なところ、これをかけただけで眼精疲労が劇的に解消されるという実感はなかった。眼科医の間でも、ブルーライトカット眼鏡の効果については限定的だとする見解と、一定の負担軽減効果を認める見解が併存しており、統一的な結論には至っていない。

過度な期待を持って眼鏡だけに頼るのではなく、あくまで数ある対策のひとつとして位置づけ、後述する休憩習慣や照明環境の見直しと合わせて使う方が現実的だと自分は考えている。道具に頼りきって基本動作を怠るのは、高いバットを買えば打率が上がると思い込むのと同じ勘違いだ。

40代から、目のメンテナンスを「守備練習」として組み込む

自分がチームの守備練習で徹底していたのは、「疲れる前に休む」というリズムだ。疲労が限界に達してから休んでも、そこからの回復には時間がかかる。目のケアも同じ発想で、症状が出る前に予防的な休憩を組み込む方が結果的に効率がいい。

①1時間に1回、20秒だけ遠くを見る。近距離視を続けた毛様体筋を、意識的に緩める時間を作る。タイマーをセットしておけば、集中していても忘れずに実行できる。

②意識的にまばたきの回数を増やす。画面を見ているときほどまばたきが減ることを自覚し、乾きを感じる前にまばたきを増やす習慣をつける。

③部屋の照明と画面の明るさの差を減らす。暗い部屋でモニターだけが明るい状態を避け、間接照明などで部屋全体の明るさを底上げする。

④違和感が続くなら、我慢せず眼科を受診する。「年齢のせい」と自己判断で片付けず、視力低下やかすみが続く場合は専門医に相談する。単なる老眼ではなく、別の疾患が隠れている可能性もゼロではない。

モニターとの距離、意外と測ったことがないのでは

在宅ワークの環境を整える際、椅子や机の高さは気にする人が多い一方、モニターとの距離を実際に測ったことがある人は少ないという印象を自分は持っている。近すぎる距離での作業が近距離視の負荷を増やす一因になるなら、まずここを見直すのが手っ取り早い。

自分が意識しているのは、腕を伸ばしたときに指先がぎりぎり画面に届くかどうかという距離感だ。文字が小さくて読みにくい場合は、距離を詰めるのではなく、OSやアプリ側の文字サイズ・画面拡大率を上げる方で対応する。目を画面に近づける癖がついている人ほど、この設定変更だけで負荷が下がることがある。

甲子園を目指していた頃、素振りのフォームを鏡で確認する習慣があった。フォームの微妙なズレは、自分では気づきにくいからだ。モニターとの距離も同じで、無意識のうちに近づいていることに気づかないまま何年も作業を続けている人は、意外と多いのではないかと自分は思っている。

モニターとの距離を確認する

4番打者としての結論

40代になって視界の違和感を覚えたとき、真っ先に「老眼だから仕方ない」と結論づけるのは早計だと自分は思っている。実際には、在宅ワークという働き方そのものが、近距離視・明暗差・まばたきの減少という3つの負荷を目に与え続けている。7割以上の人が何らかの目の悩みを抱えているという数字は、決して他人事ではない。

バッターボックスに立ち続けるために鍛えるべきは筋力だけではない。ボールを最後まで見極める「目」という道具のメンテナンスを怠れば、どれだけ経験を積んでも打率は落ちていく。1時間に1回、20秒だけ遠くを見る。その地味な習慣が、10年後の自分の視界を守る投資になると自分は信じている。

※本記事は情報提供を目的としており、症状が続く場合は自己判断せず、眼科などの専門医にご相談ください。

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