MT5のEAが「動かない」と感じたら、最初に売買設定をいじるのではなく、①EAがチャートで有効か、②Expertsに何が出たか、③Journalに接続や取引の記録があるかを順に確認します。「注文がない」と「プログラムが止まった」は別の状態です。実口座で条件を変えて試す前に、原因の場所を狭めましょう。
朝、MT5を開いて取引が一つもない。昨日までは動いていたEAなのに、止まったのか。VPSを使っていると、画面から切れたことまで原因に思えてきます。でも、ここでロットや損切りを触っても、動作の問題は解けません。利益を追う前に、まず機械が何をしていたかを読む。製造現場で設備の異常を調べるときと同じで、設定を無差別に変えるより、時刻と記録を並べた方が早いことがあります。
この記事は投資判断やEAの収益性の話ではありません。MT5の公式ヘルプをもとに、自分の環境で安全に確認できる順序を整理します。ログには口座番号、サーバー名、注文内容などが含まれる場合があります。相談するときは、そのままSNSに貼らず、個人情報と取引情報を隠してください。
「MT5のチャート自体が止まる」ときは、EAの許可より先に価格の更新を見ます。気配値表示で対象銘柄のBid・Askと最終受信時刻を確認し、銘柄の「仕様」にある気配値・取引セッションと照合します。気配値の時刻はブローカーのサーバー時間です。受信時刻が進まないなら、配信時間外か、Journalに接続断の記録がないかを確認。価格の受信は続くのに注文だけがない場合は、以下のEA確認へ進みます。気配値表示の公式説明と、自動売買OFFでもNewTickは発生するという公式仕様を分けて考えると、値動きを戻そうとして売買許可をONにする必要はありません。価格が更新されても、EAの正常動作が証明されたわけではありません。
まずチャートと自動売買の許可を確かめる

EAは「ファイルが入っている」だけでは稼働しません。MetaTrader 5の公式ヘルプでは、EAを対象チャートへ適用し、プラットフォーム側の自動売買許可と、EA側の個別許可を確認する構造が示されています。チャート右上のEA表示も確認します。対象の銘柄や時間足が意図したものか。別のチャートに装着していないか。更新後にEAが外れていないか。ここはログを読む前の土台です。
プラットフォーム全体の許可が切れていれば、EA側だけを許可しても自動売買はできません。逆も同じです。ただし「許可がある=必ず注文する」ではありません。EAの条件がそろわなければ、注文しないのが正常かもしれない。画面の印だけで「稼働は完全」「故障した」と決めず、その後のログと合わせます。
VPSやリモート接続を使う場合、手元の画面と実際に動かしたい端末を混同しがちです。自宅PCのMT5が開いていることと、VPS上のMT5の状態は別。どちらの端末のログを見ているか最初に決めます。画面が消えた、RDPが切れたというだけでEA停止とは断定できません。接続の問題は別記事のVPS・RDP切断の切り分けも参考にしてください。
設定が意図と違うと分かったら、むやみに実口座で注文を発生させて「動いた」と確かめない。まず設定を記録し、必要ならデモ環境などで安全に再現します。実取引に影響する変更は、EAの仕様を理解した上で行うべきです。
| 見える状態 | NG(✕) | OK(◯) |
|---|---|---|
| 注文なし | 即、EA故障と決める | 条件未成立と停止を分ける |
| 画面が切れた | 取引停止と断定 | 実行端末とログを確認 |
| 許可設定 | 片方だけ見る | 全体とEA個別を照合 |
ExpertsとJournalは、役割を分けて読む

MT5のToolboxには「Experts」と「Journal」があります。公式ヘルプによれば、ExpertsにはEAなどの自動売買プログラムに関するイベント、Journalにはプラットフォームの起動、接続、取引操作などのイベントが記録されます。見たいものが違います。EAの初期化やプログラム側のメッセージを探すならExperts、端末やサーバー接続に何が起きたかならJournalを先に見ると、迷いが減ります。
最初に、注文が無かった時間帯の前後を決めます。「昨日の夕方から今朝」では広すぎるなら、最後に正常な動作を見た時刻と、異常に気づいた時刻を二つ書き出す。時刻の基準にも注意が必要です。MetaTraderのヘルプには、ログ上の時刻はコンピューターの時刻であると説明されています。サーバー時間やスマホの表示時間と混同すると、関係のない行を原因扱いしてしまいます。
ExpertsでEA名や対象チャートに関係する行を見つけても、一行の警告だけで結論を出さない。その直前にEAの起動・再初期化・パラメータ変更などがないか、直後に処理が続いているかを見ます。Journalでは接続断と再接続の時刻が、注文がない時間帯と重なるかを確かめます。記録がない時間帯については、ログの保存範囲や見ている端末を確認し、「何も起きなかった」とは決めつけません。
画面のタブに直近の行しかない場合もあります。公式ヘルプでは、プラットフォームのログファイルとMQL5側のログファイルがそれぞれ保存される構成が案内されています。古い時刻を調べるなら、対応するログファイルを確認します。保存場所の画面操作はMT5のバージョンにより変わり得るため、現行のプラットフォームからデータフォルダを開いて辿るのが安全です。
ログを外部へ送る必要があるなら、原本を残したうえで複製を作り、口座、サーバー、注文番号、IPなどの識別情報を伏せる。スクリーンショットにも同じ情報が写るので注意してください。診断のための共有と、実口座の詳細公開は違います。
エラーは「発生場所」と「前後の行」で読む

赤い表示や番号を見ると、その番号だけを検索したくなります。しかしMT5には、プログラム実行時のエラーと、取引サーバーが返す結果など、違う層の番号があります。MQL5公式文書のエラー一覧も一種類ではありません。番号だけを抜き出して別の一覧に当てはめると、関係のない対策へ進むおそれがあります。まず、その行がExpertsに出たのか、Journalに出たのか。EA名と時刻は一致するか。実際の注文要求が出たか。ここを分けます。
接続の問題が同じ時間帯にあれば、通信や端末の再接続から調べます。EA内部の初期化に関する表示なら、EAのバージョン、設定変更、依存するインジケーターやファイルを確認します。取引サーバーからの応答なら、要求と応答の組み合わせを読む。どれも「ロットを大きくする」「条件を緩める」という対策には直結しません。
エラー行がないのに注文がない場合もあります。EAが条件に達していない、対象時間帯ではない、フィルターが働いた、あるいはEAがそもそも処理経過をログに書かない可能性もある。ログが静か=正常稼働の証明でも、故障の証明でもありません。 EAの設計や説明書に「何をログへ出すか」が書かれているか確かめます。
ログの行を比較するときは、時刻、端末、EAのファイルと設定、銘柄・時間足を同じ条件で控えます。再現が必要ならデモ環境やテスターで行い、実口座を実験場にしない。テスターで動いたから実運用でも同じ注文が出る、とも言えません。市場データ、接続、スプレッド、EAの設定など環境が異なるためです。診断の目的は利益を示すことではなく、止まった場所を特定することです。
直した後は「再開」を実物で確かめる

疑わしい原因が見つかったら、一度にいくつも変更しない。自動売買許可、EA設定、VPS再起動、MT5再起動を同時に行うと、どれが効いたか分からなくなります。変更前の状態、変更した一項目、変更後のExpertsとJournalを短く記録する。エラーが消えたか、EAの起動や処理が確認できたか、接続が継続したかを分けて確かめます。
「再開できた」の意味も決めておきます。EAがチャートへ装着され、許可があり、必要なログが出ていることと、新しい売買注文が成立したことは同じではありません。条件が成立しない日は、注文がないまま正常に待っている可能性がある。実口座で無理に注文を起こすのは避け、EAの仕様に沿う観察項目を使います。
VPSでの運用なら、RDP画面を閉じた後もMT5プロセスが実行される設計・設定か確認します。ただし、RDP接続が切れたときの動作は環境に依存します。断定せず、実端末の稼働状態とログで照合してください。自動更新や端末再起動の履歴があれば時刻を並べ、EAの停止時刻と重なるか見る。関係がなければ次の候補へ進む。設備の点検と同じく、一つずつ潰します。
最後に、同じ異常が出たときに見返せる簡単なメモを残します。「対象端末」「正常だった最後の時刻」「Expertsの行」「Journalの行」「変更した一項目」「再確認した結果」。証拠を一枚にまとめるだけで、次に焦らずに済みます。取引の成否ではなく、動作の事実を記録するメモです。
一次資料:MetaTrader 5公式:EAと自動売買/MetaTrader 5公式:ログ/MQL5公式:エラー・警告。環境固有の設定と取引判断は、利用するEAの文書と提供元の案内も確認してください。
よくある質問(Q&A)
Q. 注文がゼロならEAが止まった証拠ですか?
A. いいえ。条件未成立でも注文はありません。装着・許可・Experts・Journal・EAの仕様を合わせて確認します。
Q. ExpertsとJournal、最初はどちらを見ますか?
A. EA自身の起動や処理を知りたいならExperts、接続やプラットフォームの出来事を知りたいならJournalです。同じ時刻を並べると原因を絞れます。
Q. エラー番号をそのまま検索すれば解決しますか?
A. 番号の種類と発生場所を先に確認します。別の種類のエラー一覧に当てはめると対策を誤ります。前後の行を含めて読んでください。
機械が期待どおりに動かないと、こちらが先に慌てます。工場の設備でも、音がしないだけで故障とは限らないし、動いて見えても記録を見れば異常があるかもしれない。EAも「取引がない」の一言で決めず、画面、Experts、Journalと順に見たい。原因を探している時間はもどかしいけれど、無闇に設定を動かすより、次の同じ場面で自分を助けるはずです。
相場に勝つ方法を語る記事ではありません。資金に関わる操作だからこそ、分からないまま実口座で試さないという親父の慎重さです。仕事と家族の両方で、焦ったときこそ一呼吸置く話は親父の奮闘記にも書いています。

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