チャートを閉じられなかった夜。「ポジポジ病」という見えない敵の正体
含み損を抱えたポジションを決済した直後、自分はまた新しいポジションを開いていた。損切りした瞬間の「取り返したい」という感情に、体が勝手に反応していた。冷静になって振り返れば、根拠と呼べるものは何もなかった。ただ「何もしないでいる」ことに耐えられなかっただけだ。
気づけばその日だけで7回もエントリーを繰り返し、トータルの損失は普段の3倍近くに膨らんでいた。決算書の数字には人一倍厳しいはずの自分が、なぜチャートの前ではこうも我慢が利かなくなるのか。しばらく考えて、これには「ポジポジ病」という名前がついていることを知った。
ポジポジ病とは、根拠なく打席に立ち続けてしまう病

ポジポジ病とは、常にポジションを持っていないと落ち着かなくなる心理状態を指す言葉だ。FXの世界では「オーバートレード」とも呼ばれ、根拠のないエントリーや、損失を取り返すための無理なエントリーを繰り返し、不用意な損失を重ねてしまう状態を意味する。
出典:FX初心者にありがちな失敗『ポジポジ病』とその対処法|外為どっとコム マネ育チャンネル
野球で言えば、ボール球にまで手を出し続けるバッターに近い。「見逃し三振だけは避けたい」という焦りが、かえって打率を下げていく。自分がまさにその状態だった。
「誰かが儲けている」という焦りが引き金になる
ポジポジ病の背景にある心理として、「この瞬間にも誰かが儲けている」「早く損失を取り戻したい」「もっと利益を出したい」という感情が挙げられている。これらの感情がポジションを持つこと自体を目的化させ、本来の売買判断を曇らせてしまう。
出典:FXのポジポジ病とは?克服方法と原因・対策方法を解説|BigBossコラム
トレード回数が増えれば増えるほど、損をする回数も比例して増えていく。当然の理屈のはずなのに、ポジションを閉じている時間が「機会損失」に感じられてしまい、冷静な判断ができなくなる。
個人投資家の約4割が、年間でマイナスという現実
金融先物取引業協会が2023年3月に公表した調査報告書によると、2022年のFX取引で年間損益がマイナスだったと回答した個人投資家は39.7%だった。裏を返せば6割は利益を出しているとも言えるが、4割近くが年間トータルで負けているという事実は軽くない。
出典:FXの損失者の割合は39.7%!初心者のため失敗回避策とお得な税金対策|資産形成ゴールドオンライン
利益を出す人と出せない人の違いの一つは、資金管理が適切かどうかにあるとされている。エントリー回数を自分でコントロールできているかどうかは、その資金管理の入り口に当たる部分だ。
経営の判断と、トレードの判断は似ているようで違う
経営者として日々下している判断の多くは、「今動かないこと」自体が一つの立派な意思決定だ。市況が悪ければ静観し、無理に新規事業へ手を出さない。この「待つ判断」を、自分は経営では自然にできる。
だがチャートの前に座ると、なぜか話が変わる。ポジションを持たない時間が「サボっている」ように感じられ、無理にでも何かをしたくなる。経営とトレードで自分の中の基準が矛盾していることに、今回初めて気づかされた。
ポジポジ病を断ち切るための3つの打席ルール
①1日のエントリー回数に上限を決めておく。取引を始める前にルールを固定し、その日の上限に達したらチャートを閉じる。上限を決めておくこと自体が対策として推奨されている。
出典:ポジポジ病とは?FXの「止まらないガチャガチャ」の正体と克服法|白黒FX用語辞典
②損切り直後は、一定時間チャートから離れる。感情が昂ぶった直後のエントリーほど、根拠のない「取り返しトレード」になりやすい。自分はタイマーで最低30分はチャートを開かないと決めた。
③「ノーポジションの時間」も打席の一部だと考え直す。バッターボックスに立ち続けることが仕事ではなく、良い球だけを選んで振ることが仕事だ。ポジションを持たない時間は、サボりではなく次の好機のための準備期間だと捉え直す必要がある。
4番打者としての結論
現役時代、四球を選ぶことよりも打ちにいくことの方が評価されると思い込んでいた時期があった。だが本当に打率を残す打者ほど、見逃す球の見極めが正確だった。
含み損を抱えた夜、チャートを閉じられなかった自分に足りなかったのは分析力ではなく、「何もしない」という選択を打席の一部として受け入れる姿勢だったのだと、今は思う。
※本記事は情報提供を目的としており、投資判断は自己責任でお願いします。特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。

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