血圧の欄に赤いマークがついているのを見て、去年も同じ場所に同じマークがあったことを思い出した。「まあ今回もそのうち下がるだろう」と、資料をクリアファイルに戻して机の引き出しにしまう。これが3年目になる。
自分の周りの経営者仲間にも、健康診断の結果を「見てはいるけど、行動には移していない」人が多い。決算書の数字にはあれだけ厳しいのに、自分の体の数字には驚くほど甘くなる。
40代の3人に1人が、すでに高血圧という現実
日本生活習慣病予防協会の統計によると、40代でおよそ3人に1人が高血圧に該当するというデータがある。決して珍しい話ではなく、むしろ40代の経営者にとっては「かかっていないほうが少数派」と言えるほどの数字だ。
出典:高血圧|生活習慣病の調査・統計|日本生活習慣病予防協会
問題は、高血圧そのものよりも「自覚症状がほとんどない」という点にある。痛くも痒くもないから、決算の締め切りや取引先との商談を優先し、後回しにし続けてしまう。
2025年、高血圧の目標値が「全年齢で統一」された
自分がこの数字を軽く見られなくなったきっかけは、2025年に高血圧治療ガイドラインが改訂されたというニュースを目にしたことだった。従来は年齢によって降圧目標が段階的に緩められていたが、改訂後は年齢や持病の有無にかかわらず、診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満という目標に統一された。
出典:高血圧管理・治療ガイドラインが更新されました。|みどりのふきたクリニック
「歳を取れば血圧が高いのはある程度仕方ない」という認識自体が、もう古い前提になっているということだ。診断基準(診察室140/90mmHg以上)は据え置きだが、目標値は明確に厳しくなった。
収縮期血圧10mmHg下げるだけで、リスクは約2割下がる
日経ビジネスの記事によれば、130mmHgを超えたあたりから脳卒中や心疾患のリスクが徐々に高まり始め、収縮期血圧を10mmHg下げるだけで、これらの疾患リスクを約20%下げられるという報告がある。
出典:高血圧のリスクと原因 2025年のガイドライン改訂を理解し正しい対策を|日経ビジネス電子版
たった10mmHg、体感としては何も変わらない程度の数字だ。だが野球で言えば、打率を1割上げるのがどれだけ大変かを知っている自分からすると、「たった10mmHgでリスクが2割減る」というのは、努力に対するリターンが異様に良い部類の話に思える。
高血圧は、脳・心臓・腎臓という「主力選手」を痛めつける
高血圧が怖いのは、それ自体が痛みを伴わないまま、脳・心臓・腎臓といった生命維持に直結する臓器へじわじわと負担をかけ続ける点だ。事業で言えば、資金繰りの悪化にまったく気づかないまま、気づいたときには不渡りの一歩手前まで来ている状態に近い。
自分は経営者として、資金繰り表は毎月欠かさず確認する。血圧という「体の資金繰り表」を、同じ頻度で見てこなかったことに気づいたのは、正直恥ずかしい話だ。
「守備範囲」を広げるほど、体の土台が問われる
現役時代、4番打者としてチームの中心にいた頃は、自分が打てなければ試合が動かないというプレッシャーの中で戦っていた。経営者になった今も似たような構造がある。自分が倒れれば、会社全体が止まる。
体育会系の「気合で乗り切る」という発想は、若い頃はある程度通用したが、40代の血圧には通用しない。気合では血管の壁は柔らかくならない。
40代からできる、地味だが効く3つの対策
①減塩を「厳しくやりすぎない」範囲で意識する。極端な減塩は続かない。まずは味噌汁を1日1杯減らす、麺類の汁を残す、といった小さな置き換えから始める方が長続きする。
②家庭用血圧計で「家庭血圧」を測る習慣をつける。2025年の新基準では家庭血圧125/75mmHg未満が目標とされている。診察室での1回きりの測定より、家庭での継続測定のほうが実態に近い数字が出る。
③週2〜3回、軽い有酸素運動を挟む。ジムに通う時間を確保できなくても、駅までの道を少し早歩きにする程度で十分な効果があるとされている。
4番打者としての結論
3年連続で「要再検査」を見て見ぬふりをしてきた自分が言うのもおかしな話だが、この数字を放置し続けることは、決算書の異常値を見ないふりして経営を続けるのと同じくらい危険な行為だと、今は思っている。
収縮期血圧を10mmHg下げるだけでリスクが約2割下がるなら、これはコストパフォーマンスの良い投資だ。来月の健康診断では、同じ場所に同じ赤いマークを見たくない。
※本記事は情報提供を目的としており、血圧に不安がある場合は自己判断せず、医療機関にご相談ください。

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