お盆休みを有給扱いにしてよい?小さな会社が一斉休業前に分ける「4人」

お盆休みを有給扱いにしてよい?小さな会社が一斉休業前に分ける「4人」

結論から言うと、お盆の一斉休業を全員まとめて年次有給休暇にする前に、従業員を「計画年休に使える日数がある人」「5日を残すと足りない人」「まだ年休権がない人」「対象外を検討する人」の4群に分ける必要があります。

会社カレンダーへ「8月○日・年休」と入力するのは、その後です。

小さな会社では、経営者が営業予定、給与、勤怠を一緒に見ていることがあります。全社で休む日を先に決めれば、処理も全員同じにしたくなる。けれど、同じ日に休む人でも、年休の基準日と残日数は同じとは限りません。

野球で言えば、試合日程だけ決めて選手登録を後回しにするようなものです。先に見るべきは日付ではなく、その日に誰をどの制度で休ませるかです。

この記事は、2026年8月11日に厚生労働省の公式資料を確認し、一般的な確認順をまとめたものです。個別企業での適法な扱いは、雇用契約、就業規則、労使協定、各人の付与日・取得状況で変わります。最終判断に迷う場合は、労働局・労働基準監督署の相談窓口や社会保険労務士へ確認してください。

目次

まず「夏季休暇」と「年次有給休暇」を分ける

お盆休みを有給扱いにしてよい?小さな会社が一斉休業前に分ける「4人」の確認図1

最初に確認したいのは、社内カレンダーの「夏季休暇」という名前ではなく、その日の法的・社内制度上の扱いです。

たとえば同じ「お盆休み」でも、会社がもともと休日として定めている場合、会社独自の特別有給休暇にする場合、年次有給休暇の計画的付与を使う場合では、勤怠処理の根拠が違います。

年次有給休暇の計画的付与は、会社が何となく休業日を指定して全員の残数を減らす仕組みではありません。厚生労働省は、年休の付与日数のうち5日を除いた残りについて、労使協定を結べば計画的に取得日を割り振れる制度だと案内しています。[CLM-001]

ここでの判断は「お盆だから有給にできるか」ではなく、次の問いに変えると整理しやすくなります。

この人には、自由に取得できる5日を残したうえで、計画年休に使える日数があるか。

この問いを一人ずつ確認するのが出発点です。

一斉休業前に従業員を4群へ分ける

お盆休みを有給扱いにしてよい?小さな会社が一斉休業前に分ける「4人」の確認図2

従業員名簿に、まず次の4区分の列を追加します。この段階で、年休を何日減らすかはまだ決めません。

区分 確認すること 次の判断
A 計画年休に使える人 付与日数、繰越、取得済み、自由取得分5日を残した残り 就業規則・労使協定・指定日を確認
B 5日を残すと足りない人 計画付与に回せる日数が休業日数より少ない 不足日を別の扱いにできるか確認
C まだ年休権がない人 入社日、継続勤務期間、出勤率など 特別有給休暇や休業手当等を確認
D 対象外を検討する人 育休・産休、退職予定、指定日の勤務状況 労使協定の対象者定義を確認

A:計画年休に使える日数がある人

厚生労働省の案内では、計画的付与に回せるのは、付与日数から5日を除いた部分です。繰越分がある場合は、それを含む付与日数から5日を引いた日数を対象にできると説明されています。[CLM-001]

ただし、残数だけ合えば終わりではありません。就業規則に計画的付与の定めがあるか、書面の労使協定があるか、その協定で対象者・日数・方法・具体的な日をどう定めているかを続けて確認します。[CLM-002]

B:自由取得分5日を残すと足りない人

たとえば会社が3日間の一斉休業を計画していても、その人が計画年休に回せる日数は1日しかないかもしれません。そのとき「ほかの人と同じ3日を減らす」と処理すると、自由に取得できる5日を侵す可能性があります。

この群は、休業日数と計画付与可能日数の差を見える化します。足りない日を欠勤にする、勝手に年休へ振り替える、といった一行処理はしません。一斉休業の不足者について、厚生労働省の手続き案内は、特別有給休暇または休業手当として平均賃金の60%以上を支払う方法を示しています。[CLM-004]

自社でどの扱いが必要かは、休業の成り立ちや規程によって変わります。公式案内に選択肢があることと、自社の個別結論が確定したことは分けてください。

C:まだ年休権がない人

入社したばかりの人など、指定日時点で年休権が発生していない人は、計画年休の残数がそもそもありません。

全社休業だからという理由だけで、未来に発生する年休から前借りしたことにするのは避けます。厚生労働省の案内は、一斉休業日に年休がない、または日数が少ない人について、特別有給休暇や休業手当という扱いを示しています。[CLM-004]

採用日が違う会社では、このC群が毎年変わります。「去年の名簿をコピー」が危ない理由です。

D:対象外を検討する人

計画付与の日に育児休業や産前産後休業へ入ることが分かっている人、定年などで退職予定の人について、厚生労働省は労使協定で対象から外しておく例を示しています。[CLM-005]

ここは「休んでいるから全員対象外」と広げず、協定の対象者定義と各人の状況を照合します。対象外者を後から思い出すのではなく、協定を作る段階で扱いを決めておくのがポイントです。

計画年休の導入は「就業規則→労使協定→名簿」の順で見る

お盆休みを有給扱いにしてよい?小さな会社が一斉休業前に分ける「4人」の確認図3

4群を分けたら、制度の書類を確認します。

厚生労働省によると、計画的付与を導入するには、就業規則への規定と、労働者の過半数で組織する労働組合または過半数代表者との書面による労使協定が必要です。この労使協定は労働基準監督署へ届け出る必要はないとされています。[CLM-002]

確認順は次の通りです。

  1. 就業規則に計画的付与の定めがあるか
  2. 過半数代表者等との書面の労使協定があるか
  3. 協定の対象者、対象日数、付与方法、具体的な日が今回と一致するか
  4. 年休がない・少ない人の扱いが決まっているか
  5. 指定日を変更する場合の手続きが定められているか

協定は「ある・ない」だけでなく、中身が今回の休業に対応しているかを見ます。昨年の協定が今年の日付や対象者をそのまま支えるとは限りません。

一斉付与だけが計画年休ではない

厚生労働省は、計画的付与の方法として、一斉付与、班・グループ別の交替制付与、個人別付与を示しています。[CLM-003]

製造部門など全員で操業を止められる事業場は一斉付与、店舗や顧客対応を止めにくい事業場は交替制、個々の予定を調整するなら個人別という考え方です。

「お盆だから全社一斉」が自社の業務に合わないなら、計画年休そのものを否定する必要はありません。会社の休業設計と、年休の付与方法を別々に考える余地があります。

ここで決めるのは、休みを増やすか減らすかではありません。顧客対応を残すのか、部門を止められるのか、誰に自由取得日を確保するのかです。

「年5日の取得義務」と計画年休を一緒にしない

法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、使用者には毎年5日の取得を確保する義務があります。本人が請求して取得した日や、計画年休で取得した日は、その5日から控除されます。[CLM-006]

ただし、この説明から「年5日取らせる義務があるので、会社が好きな日を有給にできる」とは言えません。

本人の請求、計画年休、使用者による時季指定は、それぞれ確認すべき手順があります。取得日数の集計が同じ年5日に関係しても、日を決める根拠まで同じになるわけではありません。

小さな会社ほど、勤怠ソフトに表示される「取得済み○日」だけで安心しがちです。入力前に、どの制度経路でその日を取得させたのかを残しておくと、後から説明しやすくなります。

年休管理簿は「残数」だけでは足りない

厚生労働省の説明では、年休管理簿には時季、日数、基準日を記載し、期間満了後3年間保存する必要があります。[CLM-007]

お盆の一斉休業前には、少なくとも次を一人1行で確認します。

確認欄 記入内容
基準日 今回の指定日がどの1年の管理期間に入るか
付与・繰越 付与日数と繰越日数
本人取得済み 本人請求で取得済みの日数
計画年休済み すでに計画付与した日数
時季指定済み 使用者指定で取得させた日数
今回使える日数 自由取得分5日を残して使える日数
区分 A・B・C・D
根拠 就業規則条項・労使協定・別扱い

この表の目的は、年休を最大限減らすことではありません。人によって条件が違うことを、勤怠入力の前に見つけることです。

時間単位年休を一斉付与の穴埋めにしない

「1日分が足りないなら、時間単位の年休を組み合わせればよい」と考えたくなる場面があります。

しかし厚生労働省のFAQは、時間単位年休を計画的付与として与えることは認められないと説明しています。[CLM-008]

時間単位年休には別の労使協定や取得の条件があります。計画年休の日数不足を埋める道具として混ぜず、別制度として確認してください。

よくある失敗を5つの質問で止める

勤怠を確定する前に、経営者か担当者が次の5問へ答えます。

  1. その日は、会社休日、特別休暇、計画年休のどれか
  2. 計画年休なら、就業規則と書面の労使協定があるか
  3. 各人に自由取得分5日を残して使える日数があるか
  4. 年休がない・少ない人、休業中・退職予定の人を分けたか
  5. 年休管理簿へ基準日、時季、日数と根拠を記録できるか

一つでも空欄なら、給与計算へ渡す前に止めます。

自分は会社経営の判断で、全員を同じ表へ入れると事務が速くなる場面が多いと感じます。ただし本件について具体的な自社運用を公開した事実はありません。ここで示したのは、公式資料から作った一般的な確認順です。労務では「同じ処理」が必ずしも公平とは限らず、条件の違いを先に見つけることが守備になります。

FAQ

お盆休みなら、会社が全員の有給を自動で使えますか?

お盆という時期だけでは決まりません。計画年休として扱うなら、対象日数、就業規則、書面の労使協定、各人の残日数や対象範囲を確認します。[CLM-001][CLM-002]

計画年休でも、本人が自由に使える5日は残す必要がありますか?

はい。厚生労働省は、付与日数のうち5日を除く残りを計画的付与の対象にできると説明しています。[CLM-001]

入社したばかりで有給がない人は、欠勤扱いですか?

一律に欠勤と断定できません。一斉休業で年休がない・少ない人について、公式案内には特別有給休暇や休業手当の扱いが示されています。自社の状況と規程に基づき確認してください。[CLM-004]

計画年休の労使協定は労基署へ届け出ますか?

厚生労働省の手続き案内では、所轄労働基準監督署への届出は不要とされています。ただし書面での締結は必要です。[CLM-002]

時間単位年休を計画的に割り振れますか?

厚生労働省FAQは、時間単位年休を計画的付与として与えることは認められないと説明しています。[CLM-008]

まとめ:休業日より先に「4人」を分ける

お盆の一斉休業で先に決めるのは、勤怠コードではありません。

  • 計画年休に使える人
  • 5日を残すと足りない人
  • まだ年休権がない人
  • 対象外を検討する人

この4群を名簿で分け、就業規則、労使協定、指定日、別扱い、管理簿の順に確認します。

全員を一度に処理する前に、まず一人分だけ最後までたどってください。そこで空欄が見つかれば、給与確定前に直せます。

出典(2026年8月11日確認)

  1. 厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与制度とは」 https://work-holiday.mhlw.go.jp/planned-granting/
  2. 厚生労働省「計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き」 https://work-holiday.mhlw.go.jp/planned-granting/procedure.html
  3. 厚生労働省「年次有給休暇の時季指定」 https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/salaried.html
  4. 厚生労働省「年次有給休暇」 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_yukyu.html
  5. 厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与について」 https://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/faq_04.html
  6. 福岡労働局「夏季における年次有給休暇の取得促進について」 https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/news_topics/00891.html
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